書評人気ブログランキングをチェック!
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村 本ブログへ

【腑抜けども、悲しみの愛を見せろ】 本谷由希子


腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (単行本)
本谷 有希子 (著)


内容(「MARC」データベースより)
「お姉ちゃんは最高におもしろいよ」と叫んで14歳の妹がしでかした恐怖の事件。妹を信じてはいけないし許してもいけない。「劇団、本谷有希子」の第1回公演の演目を大幅に改稿した小説。第18回三島由紀夫賞最終候補作。

本谷由希子、うーん、何だか売れていますね最近。
彼女は某演劇学校?だか何だかで松尾スズキの生徒だったそうです。
私は個人的に松尾スズキの書く物が戯曲エッセイ小説何でも好きなので、その生徒と聞いて手を出しました、ミーハーにもほどがありますね。

内容は、両親の訃報を受け、4年ほど音信不通だった姉が田舎に帰省してくるところから始まります。
おもな登場人物は、女優になることを夢見て都会に飛び出したものの、自意識過剰と高慢さ故にただの我儘女になり下がった姉、地味で漫画家になることを夢見ている妹、死んだ母の連れ子だった兄、そして兄と結婚紹介所で出会い入籍したその嫁、の4人です。
姉は妹に執拗なまでの嫌がらせをし、兄はそんな姉妹に何故か口出しせず、兄嫁は悲しくなるくらい気遣いをする馬鹿です。
これは結構最初の方でネタバレすることなので書いちゃいますが、姉は以前、自分をネタにして妹が漫画を描いたことを物凄く根に持っているんですね。
妹は、姉の「それ頭おかしいんじゃね?」な自意識ぶっとびの行動を、常に面白おかしく観察していたわけですよ。
はい、もうね。
ここでもう、ダメな人は受け付けないと思います、本当。
私も読みはしたんですが、どうにも「ステレオタイプなキャラクター大感謝祭」な状態に辟易してしまいました。
ステレオタイプ、というのも、よくいるタイプだから「ステレオ」と称されるわけですが、どうにもここまで極端にキャラクター化されてしまうと、読者の感情移入をする余地が無くなってしまいがちことが、とても残念です。
彼女の小説に関する描写に対しての意見も「とても濃密で感心する!」という人もいれば「説明し過ぎてこれは小説ではない」というものまで様々です。

この小説は、確かに「小説というよりは、ト書きがやたらめったら書きこまれたシナリオ」といった方が正しいかもしれません。
情景描写の飽きが出るぐらいの過剰さは、この作品自体が一度劇場で上映されているということから、視覚化されたものを綴っていることによるのかもしれません。
そりゃー見てるもん書いてるんだから、執拗にも過剰にもなるわな。

でも、そこの描写にも、意図的なのか否かは別として、あまり品性を感じるわけでもありません。
というか、描写が取沙汰されているわりには、なにやら明け透け過ぎて、うーん。
解りやすい文章だとは思いますが、好き嫌いは分かれるでしょうね。
人物も、「これが人間なのだ」と言われたらそれまでですが、4人の主要人物のどいつもこいつも好きになりにくいのも残念です。
人間臭い魅力、というものが、あまり感じられません。

何だか、そこまで言うならレビュー書くなよ、と言われそうです。
でも書きますよ、まだ書きます。

この本の凄いな、と感じるところは、一重にその不快感にあるのかと思います。
人間関係から逸脱した生活を送ることは、現代の日本においては不可能です。
そんな中で、「どーにもこいつだけは生理的にいけすかない」と感じて、特に思い出も無く、関係性が無くなった後もふとした瞬間に思い出してイラっと来る人っていませんか。
小説や戯曲だと、読者を味方につけるが勝ち、な印象が昨今色濃いようなので、ここまで嫌な奴しか出てこないのも、有る意味面白い、興味深い。
一冊の本、というよりも、「1人の嫌な人間」と遭遇した気分になります。
しかし、読み終えて「あー楽しかった、もういいや」で忘れ去られてしまう作品が多い中、このように記憶に爪痕を残していく作品は珍しいのではないでしょうか。

興味がある人は、どうぞ、ご一読ください。

ちなみに、体力があるときに読まないと、渦巻く人間の卑怯さに悪酔いして、気持ち悪くなる可能性がありますので、お気をつけて。

余談ですが、これ、タイトルほっとんど関係無いんじゃ......。

スポンサードリンク

サイト内関連記事

【ざらざら】 川上弘美
ざらざら (単行本) 川上 弘美 (著) ざらざら 川上弘美、というと、「......
【極楽・大祭・皇帝―笙野頼子初期作品集】 笙野頼子
極楽・大祭・皇帝―笙野頼子初期作品集 (講談社文芸文庫) (文庫) 笙野 頼......
【人面町四丁目】 北野勇作
北野勇作『人面町四丁目』(角川書店) カバー写真:在本彌生 人面町四丁目 (角......
【ニシノユキヒコの恋と冒険】 川上弘美
ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫) (文庫) 川上 弘美 (著) ニシ......
【イン・ザ・プール】 奥田英郎
イン・ザ・プール (文春文庫) (文庫) 奥田 英朗 (著) イン・ザ・プ......

▲このページのトップへ

HOME

携帯版のQRコード

1日1話!古本屋店員が本音で語る書評ブログ:携帯版

携帯サイトは3キャリア対応です。

当サイトは携帯でもご覧頂けます。
携帯版サイトURL:
http://keitaip.com/book/m/
上のQRコードから読み取るか、URLをケータイに送信してアクセスしてください。